窪美澄の小説。
読んでみて、やっぱり、この作者の作品
好きだなー、と思った。
主人公・史也は、父の家庭内暴力の中
育った。
28歳になった今も、少年期の過去から
解放されていない。
舞台は、青森と東京。
この物語には、史也以外
史也の妹・千尋、水希、梓と
家庭環境に恵まれなかった人物たちが
登場する。
史也が唯一、過去を話せたキャバ嬢の
水希が、まさか死んでしまうなんて・・・
私は、結構、水希という女の子を
気に入っていたので
ちょっと、ショックだった。
水希が言うように、家庭環境が
良くない同士が近づきすぎるのは
良くないのかな・・・
と、史也と同じように私も思ったけど
じゃあ、梓は?
この物語は、きっと
史也は、暴力を振るっていた父親と
梓は、自分を赤ちゃんの時に捨てた母親と
向かい合わなければ終わらないんじゃないかなって・・・
その作業は、とてつもなく逃げたいことだけど。
史也が、13歳の時に父を殺そうとしたこと
私は、理解できる。
うちも、父の家庭内暴力が激しくて
いつも母は殴られたり蹴られたりしていた。
中学生の頃、父を殺せば平和になるんじゃないかと
思ったことがある。
家庭に、暴力が存在するって地獄だ・・・
史也は、殺してはいないけど
父を半身不随にしてしまい
そのまま、伯母の家で過ごし
東京に出てきた。
母に対する史也のココロの移り変わりも
丁寧だった。
守りたい母から、守ってくれなかった母に。
私も、母に父と離婚してほしいと言ったことが
あるから、史也が3人でこのまま逃げようと
言ったキモチもわかるし
それをしなかった母に対する怒りもわかる。
でも、半身不随になった父と母の関係が
なんだか気持ち悪いって千尋は言うけど
私は、どうしても、それを想像することは
できなかったな。
20代の史也、梓は、どうして!!と
いうキモチを吐き出して
ふたりとも、親を憎くてもいいと
ふたりにしかわからない感情を共有する。
自分たちは、決して、そーいう親にはならない。
そう決めて、ふたりは結婚をする。
千尋も、自分が幸せな家庭をもつことが復讐だと
彼と結婚する。
複雑な家庭環境だと、結婚に対して
夢も希望も持てないことが多い。
でも、史也も、梓も、千尋も
結婚を選ぶ。
史也は、建築物のカメラマンになりたいと
カメラマンのアシスタントをしていたけど
そもそも、史也の実家の家は
青森の森の奥、まわりの家から浮いた
まるでペンションのような家だった。
きっと、父の暴力がなければ
その家が、好きだったかもしれない。
無意識に、建築物=家を撮る仕事を選び
梓を撮ることから、家から人、家庭という
流れで、自立した史也は家族写真を撮るほど
成長する。
梓の妊娠。ふたりは30代。
初めて親になる不安や覚悟。
そして、20代の頃には見えなかった
憎んでいた親の境遇や景色。
年老いた駐在さんが
家族で、また青森においでって言葉を
20代の史也は二度と来ないと拒否していたが
ようやく、誰もいなくなった実家や
青森を、子供にも見せたいと思うようになる。
きっと、ずっと憎くてもいいし
二度と帰らないと思っててもいいんだよね。
でも、それは年齢や立場によって
ココロは変化していく。
梓は、頭に足で踏みつけた実の母親を呼んで
今度は、作ってくれたちらし寿司を食べて
家族写真を一緒に撮ってもいいと思えるほど
ココロは変化していった。
この物語は、人のココロが
どう変わっていくのかを、描いてきたのかもしれない。
そして、それは私も同じで
この作品を、20代で読んでいたら
フラッシュバックして憎しみや苦しさで
ぐちゃぐちゃになってたかもしれない。
でも、50代になった私は
客観的に読むことができた。
共感できる部分は多かったけど
読後感は、晴れやかなキモチだった。
憎しみも、また呪縛なんだよね。
だから、私は、今は父を憎んでいない。
読み終わって、なんとなしに
カレンダーを見た。
先月、父の誕生日だった。
すっかり忘れていた。
久々に、父に電話してみようと思った。
追加
本は、ハードカバー派で
文庫本は、なるべく買わないようにしてるけど
文庫本には、解説が追加されてることに
気がついた。
解説にあった、たった1行しか出てこなかった
キャラの外伝が一冊書けなければいけないほど
ただの駒にしてはいけない。
窪美澄は、それができる小説家だと書いてあった。
私は、同時に荒木飛呂彦も外伝が描けそうと思った。
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